novel

01

公園・ベッド・同居人。
……………………………………………………………………………………
公園の砂場の上に、月明かりが落ちていた。
静かな夜だ。

私はベンチに座って、
数分前まで自分が寝ていた部屋を見上げていた。
公園の北側に建つタワーマンションの一室に、
私のベッドがある。
リンネルのシーツと、肌に馴染んだ毛布。
その間にからだを滑り込ませ、さっきまで私は眠っていたのだ。

夜の湿り気を帯びた公園は、ひっそりと息を潜めたまま、
誰か来るのをただ、待っているようだ。
けれど、誰も来ることはない。
きっとこのまま、夜が明けるだろう。

私は何事もなかったことに安堵し、あるいは落胆し、
帰って行く。
もう、私の体温を忘れてしまったベッドへと。

エレベータの直方体は、垂直移動で私を上に運ぶ。
扉が開き、左足からゆっくり歩き出す。
私の部屋は、東の角部屋の隣に位置する。
五拾歩に満たず、ドアに着いた。

中には、私の同居人がいる。
NEXT

copyright (C) 2008 design gaga inc. all rights reserved.