novel

04

情熱としての、画家。    
……………………………………………………………………………………
画家はこう言った。
「君の考え過ぎじゃないのか」
モデルはこう応えた。
「そうかも知れない」
上半身を捻り、顔だけを画家に向け、
モデルは苦しい姿勢を保ちながら、こう付け加えた。
「消えていくのよ」
モデルは画家を愛していた。
画家はモデルを愛してなどいなかった。
画家はこの三箇月のあいだ、
モデルと毎日、このアトリエで会い、
モデルを裸にし、ポーズをとらせ、そして、
モデルを描いていた。
画家がモデルの骨格を描く。
すると、モデルの身体から骨が消えていく。
画家がモデルの柔らかい髪を描く。
すると、モデルの髪は抜け落ち、白い地肌が露わになる。
画家がモデルの丸い乳房を描く。
すると、モデルの胸は無残に抉られる。
モデルは、身体の大部分を無くしていた。
NEXT BACK

copyright (C) 2008 design gaga inc. all rights reserved.