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novel

05

消失。    
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ある日、モデルは言葉を失った。
画家が脣を描いたのだ。
モデルは画家の目を見つめ、そして思った。
「最後に名前を呼んでほしい」
画家は静かに視線を外し、筆を持ち替えた。
モデルはもう、何も見ることができない。
画家が瞳を描いたのだ。
そして、何もかもが消失した。
そう、少なくともモデルにとっては。
画家は、アトリエを出た。
画家は、どこにも行くあてがない。
画家は、ただ西に向かって歩いた。
アトリエでは一枚の絵が、完成した姿を見せていた。
上半身を捻り、顔だけをこちらに向け、
苦しい姿勢を保ちながら微笑む美しいひと、の絵だ。
本を閉じた私は無表情を装って、同居人を見つめた。
同居人は平静に見えた。
私はそのことに疑念を抱いたが、
何も言わないでおこうと決め、そのまま同居人を見ていた。
私は以降、その本を開いていない。
 
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